
TCL 10 Pro レビュー≫パフォーマンスが高いミドルレンジモデル
中国メーカーのTCLが、新たなミドルレンジのSIMフリースマートフォンを、日本で発売しました。
同社のスマホは、アクセサリーやIoT機器の販売を行うFOX社が代理店となり、日本で販売されてきました。
Androidスマホとして復活したBlackBerryシリーズや、超小型の端末として話題を集めたPalm Phoneも、TCLの端末です。
一方で、いずれも借り物のブランドで、TCLの名前は全面に出していませんでした。
この方針を変え、テレビで培ったTCLブランドをスマホに展開し始めたのが2019年9月のこと。
独ベルリンで開催されたグローバル向けの展示会で、「TCL PLEX」と呼ばれる端末を披露しました。
この端末は、同年12月に、FOX社が取り扱うことで日本に上陸しています。
今回ご紹介する「TCL 10 Pro」は、その第二弾と言える端末。
1月に米ラスベガスでチラ見せされたスマホで、5Gモデルを含むシリーズ全機種が500ドルを切っていることで、注目されました。
そんなTCL 10 Proの実力を、実機でチェックしてみました。

ミドルレンジを超える質感で、パフォーマンスも高い
TCL 10 Proは、いわゆるミドルレンジのスマホで、チップセットにはSnapdragon 675を搭載しています。
処理能力はそこそこながらも、メモリ(RAM)は6GBと多めで、タッチに対するレスポンスなどもスムーズです。
背面のマットな処理や、剛性があり、かっちりとした金属のフレームも、高級感があります。
ミドルレンジスマホというと、質感が犠牲になることもままありますが、TCL 10 Proには、そのような不満は感じませんでした。

デザイン面では、カメラが飛び出しておらず、背面がフラットになっているのも好印象です。
背面はつや消しで、サラッとした手触り。
光の当たり方で色合いが変わって見えます。
前面のディスプレイは有機ELで、左右がカーブしているのが特徴。
そのおかげで、正面から見たとき、あたかもベゼルがないかのようなデザインになっています。
映像への没入感が高まるという点でも、このデザインは評価できます。

この左右のカーブを生かし、ディスプレイの端をタップすることで、アプリをまとめたランチャーを呼び出すことができます。
ここによく使うアプリをまとめておけば、ホーム画面をすっきり整理できるはず。
1画面にアイコンをたくさん並べるより、必要なアプリを探しやすくなるので、利用してみるといいでしょう。
こうした機能は、ディスプレイの側面がカーブした他の端末にも搭載されていますが、ミドルレンジモデルでは少ない印象です。

テレビでおなじみのTCLブランドを冠するだけに、映像にもこだわりがあります。
TCL 10 Proには「NXTVISION」という機能が搭載されており、オンにすることで、画面に映し出した映像を補正。
ダイナミックレンジを広く取り、迫力ある映像を実現する「HDR」にも対応しており、Netflixの認証も受けているため、HDRで映画などを楽しむことができます。
また、通常画質の写真や動画も、端末側でHDRにコンバートしてくれるため、映像がより鮮やかになります。

マクロ撮影もできるクアッドカメラ、画質も上々
背面には4つのカメラが並んでいます。
一般的なスマホの場合、複数のカメラを使って広角、標準、望遠と画角を切り替えられることが多いと思いますが、TCL 10 Proは、標準カメラと広角カメラのほかに、マクロ撮影用のカメラや暗所での動画用カメラが搭載されています。
画角だけでなく、役割に応じてカメラを切り替えるというわけです。

メインカメラは6400万画素と画素数が高く、解像度をフルに上げて撮ると、ディテールまで鮮明に映し出すことができます。
撮ったあと、必要な部分だけを拡大しても、元々の画像が非常に大きくなるため、劣化がほとんどないのがポイント。
ズーム用のカメラは搭載されていませんが、それに近いことができるというわけです。
広角カメラはやや画質が落ちますが、広々とした抜け感のある写真が撮れます。

おもしろいのが、マクロ撮影。
TCL 10 Proは、「スーパーマクロ」に切り替えることで、被写体に2cm程度まで寄って撮影できます。
一般的なスマホのカメラでは、ここまで近づくとピントが合わず、ボケてしまうため、この機種の特徴と言えるでしょう。
料理の一部を撮ったり、草木のディテールを写したりといったときに重宝するカメラと言えます。

暗所撮影用のカメラは、画素数が低いのが難点ですが、動画用のため、割り切って使うのが正解。
ノイズが少なく、キレイな動画を撮ることができます。
ほかにも、静止画撮影時には複数枚の写真を合成して明るく仕上げる「スーパーナイト」モードがあり、夜景撮影に重宝します。
ミドルレンジながら、カメラの性能は非常に高いスマホと言えそうです。
画面内指紋センサーやスマートキーが便利
一見すると指紋センサーが搭載されていないように見えますが、実はディスプレイ内部に埋め込まれています。
そのため、正面のベゼル部分や背面に、指紋センサーが露出していません。
デザインがすっきりしているのはそのためです。
指を置く場所が画面内の表示でしか分からないため、慣れは必要ですが、ロック解除自体はスムーズ。
顔認証を併用するのもお勧めです。

ほかのスマホにあまりない機能として便利なのが、スマートキーです。
スマートキーは本体左側面にあるボタンで、シングルプレス、ダブルプレス、長押しにそれぞれ機能やアプリを割り付けることができます。
アプリは画面上に配置したアイコンを選んで起動すればいいかもしれませんが、スクリーンショットや画面分割といった、端末の機能までダイレクトに呼び出すことができ、上手に設定すれば、使い勝手が向上します。

また、カメラについては、単にカメラを起動できるだけでなく、フロントカメラがオンになった状態で起動したり、ポートレートモードを直接起動したりといったことができます。
このキーは、画面ロック解除前から有効になるため、シャッターチャンスを逃したくないときなどにも役立ちます。
必要な機能やアプリを、サッと呼び出せるボタンはほかの端末には少なく、TCL 10 Proならではと言えるでしょう。

これだけ機能が充実していながらも、価格は4万4800円。
ミドルレンジモデルとしては、少々高めではあるものの、機能性を考えると納得できる価格と言えます。
また、MVNOによっては、回線とのセットでもう少し安価に販売しているところもあります。
例えば、OCNモバイルONEのgoo Simsellerでは、6月15日までの期間限定で、2万9800円で販売されています。
回線も必要という場合は、こうした販路も検討してみるといいでしょう。