
【TCL 10 5Gレビュー】魅力的でコストパフォーマンスが高い1台
2020年3月の5Gサービス開始から間もなく9カ月。
当初はハイエンドモデル中心だった端末も、徐々にミドルレンジに広がり始めています。
まだまだキャリアモデルが多いなか、SIMフリーモデルも少しずつ出始めています。
今回取り上げる、TCLの「TCL 10 5G」も、そんなSIMフリーモデルの1つです。
同端末は、Snapdragon 765Gを搭載したミドルレンジモデルで、最大の特徴はその価格にあります。
同チップを搭載したスマホは、ミドルレンジモデルでは上位の性能を誇り、価格もハイエンドモデルに近づいています。
これに対し、TCL 10 5Gは、税込みで3万9800円を実現。国内で正規に販売されている5Gスマホとしては、“最安”です。
超格安5GスマホのTCL 10 5G
とは言え、あまりに安いと、性能が気になってしまうのも事実。
「安物買いの銭失い」にならないかどうかを心配する人もいるでしょう。
そんな不安を解消すべく、同モデルを実際に使い、性能をチェックしてみました。
ここでは、そのレビューをお届けします。
デザインやパフォーマンスの高さはお値段以上
4万円を下回るのは、5Gスマホとして超格安ですが、デザインはそれを一切感じさせません。
確かに、ディスプレイのベゼルなどはハイエンドモデルと比べてやや厚めですが、背面はガラスで、高級感は十分。
背面の左右は緩やかにカーブしているため、持ったとき、手にしっかりとフィットします。
カメラは少々出っ張っているものの、ハイエンドモデルのような存在感はなく、机に置いたときにグラグラするといったバランスの悪さもありません。
背面ガラスは左右がカーブしており、手にフィット。
グラデーションもきれいだ
ハイエンドモデルと比べると、ベゼルの太さがやや目につく
操作時のレスポンスもよく、格安なスマホとは思えないほど、サクサク動きます。
処理能力がイマイチなスマホにありがちな引っかかりも、ほとんどありません。
例えば、スペックが不足していると文字入力アプリがサッと立ち上がらなかったり、マップのスクロールでカクついたりしますが、TCL 10 5Gは、いずれもスムーズ。
Snapdragon 765Gを搭載しているため、処理能力は十分と言えます。
試しにベンチマークアプリのGeekbench 5でCPUのスコアを計測してみましたが、こちらも十分な数値でした。
シングルコアスコアは617、マルチコアスコアは1925で、Snapdragon 865などを搭載するハイエンドモデルには一歩及びませんが、ミドルレンジの枠は超えています。
Snapdragon 765Gを搭載した他のモデルと同等のスコアで、4万円以下のスマホとしては異例の性能の高さです。
ディスプレイは液晶のため、有機ELを搭載したハイエンドモデルと比べると、色合いなどが少々浅く見えるのも事実。
先に挙げたベゼルの太さや、210gという重量感の理由の一端も、液晶にありそうです。
また、ディスプレイ内指紋認証を採用できていないのも、液晶ゆえ。
TCL 10 5Gの指紋センサーは背面に搭載されています。
顔認証などを併用すれば、ロック解除はスムーズに行えますが、机の上に置いたときには、やはり前面か側面にあった方が使いやすいでしょう。
この点は、価格ゆえのトレードオフと言えます。
指紋センサーは背面に搭載されているが、カメラの出っ張りは最小限で、すっきりした印象
クアッドカメラの実力は? 6400万画素モードも優秀
背面には、クアッドカメラを搭載しています。
メインのセンサーは、6400万画素と超高解像度。
4つのピクセルを1つにして撮影するため、通常では1600万画素相当になりますが、モードを切り替えることで、6400万画素に切り替えることもできます。
AIによる自動補正もあり、基本的にはシャッターを切るだけで、最適な画質で撮影されます。
撮った写真は以下のとおり。
色合いがやや照明に引っ張られすぎているきらいはありますが、ディテールまで鮮明で、奥がしっかりボケています。
AIによって、料理と判別したため、あえて暖色系に振っているのかもしれません。
ディテールの描写も正確です。
同じ被写体を6400万画素モードで撮影してみましたが、より細部が鮮明になっています。
屋内で撮った料理の写真。色が暖色に転びすぎてる印象はあるが、ディテールも鮮明
6400万画素モードで撮った写真は、約15MBとデータサイズも大きくなりますが、後から切り出しやすいのはメリット。
こちらのモードではAIが効かなくなるため、色味も素直になっています。
料理とは言え、少々色を暖色に振り過ぎているきらいがあったため、個人的にはこちらの仕上がりの方が好み。
状況に応じて使い分けるといいしょう。
6400万画素モードで撮った写真がこちら。AIがオフになり、よりあっさりとした色味になった
ディテールを拡大しても、ディスプレイ程度のサイズであれば劣化せずに表示できる
メインカメラとは別に、800万画素の広角カメラも搭載されています。
撮影時に、広角ボタンを押すとそちらに切り替わる仕様。ズームでシームレスに切り替わらない点には注意が必要です。
画素数は少々低めですが、解像感は悪くありません。
広角ですが、歪みが少ないのも評価できるポイント。
建物や風景などをダイナミックに切り取りたいときに、重宝しそうです。
広角にしては歪みが少なく、キレイに撮れている
おもしろいのが、500万画素のマクロカメラを搭載しているところ。
被写体に最大2cmまで寄って撮影でき、草花や料理などのディテールを捉えることができます。
小物を撮りたいときにも、便利な機能です。
逆に、この機種には望遠カメラが搭載されていません。
残り1つのカメラは200万画素の深度測定用で、実質的にはトリプルカメラと言えそうです。
6400万画素モードで撮影すれば、ある程度拡大は可能なため、割り切った仕様になっていると言えるでしょう。
最大2cm程度まで被写体に寄って撮影できるマクロカメラも搭載する
「スマートキー」などの便利機能が満載、5Gは周波数に要注意
本体側面に搭載される、「スマートキー」はTCLスマホの独自機能。
TCL 10 5Gにも搭載されており、「シングルプレス」「ダブルプレス」「長押し」にそれぞれの機能やアプリを割り当てることができます。
標準アプリについては、より深い設定ができ、例えば、単にカメラを起動できるだけでなく、フロントカメラを直接起動したり、ビデオで起動したりといったことも可能。
よく使う機能やアプリを設定しておけば、素早く操作できます。
レジ前で素早くアプリを呼び出すために、「○○Pay」のような決済アプリを設定しておくのもお勧めです。
電源キーとは反対側の側面に、アプリや各種機能を呼び出すスマートキーを備える
3つの操作に、各種機能を割り当て可能だ
その決済機能は、残念ながらFeliCaには非対応。
SIMフリースマホでおサイフケータイをサポートしている端末はまだまだ種類が少なく、特にこの価格帯で海外メーカー製となると、非対応は致し方ないところです。
先に挙げたように、コード決済アプリで不足分を補うなど、対策は必要になります。
ただし、NFCは搭載しており、NFC決済も利用可能。国内では、VISAのデビットカードなどを登録しておくことができます。
TCLと言えば、テレビメーカーとして日本でも知名度を徐々に上げていますが、このスマホにも、そのノウハウが生かされています。
「NXTVISION」と呼ばれる機能がそれで、オンにすると、色合いがより鮮やかになり、コントラストも高まります。
SDRのコンテンツをHDRとして再生する機能にも対応しています。
便利なのが、NXTVISIONのオン・オフをギャラリーから直接切り替えられるところ。機能の有無による画質の違いが分かるため、試してみてもいいでしょう。
写真では少々分かりづらいが、ギャラリーにはオン・オフをワンタッチで切り替えるボタンがあり、画質を比較できる
こうした機能を備えながら、その名の通り、5Gに対応しているのがこのモデルの特徴。
ただし、SIMフリースマホでは比較的一般的なデュアルSIMには非対応です。
5Gの対応周波数は、n77とn78の2つ。
ドコモが使用するn79には対応していないのは少々残念です。
特に4.5GHz帯のn79は、衛星との干渉が少ないため、エリアを広げやすい周波数帯。
ドコモ回線の5G対応SIMカードで使うと、思いのほかエリアが狭くなってしまうおそれもあります。
5Gに対応しているが、周波数には注意が必要になる
auやソフトバンクで使うぶんには問題ありませんが、4Gから5Gに転用する周波数帯には非対応。
5G用の新周波数帯で使うぶんにはいいかもしれませんが、2020年12月以降に拡大するエリアでは使えない可能性があることは、念頭に置いておいた方がいいかもしれません。
とは言え、これだけの機能を搭載しながら、4万円を下回る価格は破格です。
5Gを抜きにしても、十分魅力的でコストパフォーマンスが高い1台と評価できます。